こんにちは!お茶の水店、坂口です。
自転車の中でも走りに及ぼす影響が大きいといわれているホイール。主に外側の輪っか部分である"リム"、軸となる"ハブ"、リムとハブをつなげている針金のようなパーツ、"スポーク"の3つで構成されています。
今回はそのパーツの中でも”リム”はとても重要な部品ですよーというお話をしていこうと思います。
なお、長文かつややマニアックな内容になりますので、付き合ってられん!という方は飛ばしていただいて、まとめだけでも見てもらえると幸いです。
リムの素材による影響
現在市場に出回っているホイールのリムは、主にアルミとカーボンの二種類になります。大体10万円を切る価格帯のホイールはアルミ製がほとんどで、15万円以上になるとカーボン製になってきます。
リムの素材の違いはズバリ、乗り心地に影響します。アルミのリムは素材の特性上しなりやすく、逆にカーボンのリムは上から体重をかけてもほとんど撓みません。よくカーボンの方がしなるから乗り心地がいいという情報を目にしますが、ホイールに関してはあまり当てはまりません。コンフォートなホイールをお探しの方には、カーボンよりもアルミホイールのほうがオススメな場合もあります。
お茶の水店ではMAVIC様からお借りしているアルミ、カーボンリムをそれぞれご用意しておりますので、本当かな?と思われる方は是非店頭までいらしていただき、上からグイグイ体重を乗せてみてください。
リムの重量≒走りの軽さ
ホイールの外周部であるリムは、重量が走りの軽さに影響します(100%影響するわけではない)。
よくある落とし穴で、ホイール全体の重量は軽いものの、実はリムが重かったというケースがありますので、私はホイールのカタログ値よりもリムが何グラムなのかを重要だと考えています。イメージ的には、500g以上:重量級、450gくらい:そこそこ軽量、400gくらい:軽量、350gくらい:めちゃ軽量という感じで考えています。(とはいえリム重量を公開しているメーカーは非常に少ないのが現実です…)
ではリムの重量は軽ければ軽いほどいいのか。様々な意見がありますが、私は一概にそう言いきれないと思います。リム重量が重いとゼロ発進や低速からの漕ぎ出し時は力を必要とするため、重くなりますが、一方で一度加速してしまえばスピードが落ちづらく、速度維持がラクです。リムが軽い場合はその逆で、加速はしやすくなりますが速度の維持が辛くなります。慣性の法則というヤツですね!
つまり、リムが軽いとゼロ発進などの加速時やヒルクライムでは効果を発揮しますが、逆に軽すぎると平坦や下りなどの速度維持は難しくなります。
リムハイトの違い
ホイールの見た目を大きく左右するリムハイト。アルミのホイールは20~35mmくらいが一般的で、そこまで見た目に大きな差はありませんが、カーボンになるとハイトが高いもので80mm、全面がカーボンで覆われているディスクホイールというものも存在します。
リムハイトが高いと空気抵抗が削減され、より高速時にスピードを保ちやすなる他、スポークの長さが短くなるためホイールが撓みにくくなり、よりカッチリとした乗り味になりやすい傾向にあります。その代わりに重量は重くなるので、ヒルクライムや低速からの加速は苦手としています。
また、ハイトが高いと横風に煽られやすくなります。私も強風の日にディープホイールを使用した際に怖い体験をしたことがありました…。見た目が良いからという理由だけで、ハイトが高いホイールを選ぶのはあまりおススメしません。
実際、プロのレースでは登りがきついコースで30mmハイト、アップダウンの激しいコースでは50mmハイト、平坦コースでは60mmハイトくらいのホイールを使用している場面をよく見かけますし、前輪と後輪でハイト違いをチョイスしている選手も見受けられます。コースのレイアウトや好みによって使い分けているということでしょう。
余談:リムが異なるホイールを実際に使ってみて感じたこと
私がNEW BIKEで実際に使用しているWH-R9270-C50-TL。リム重量がおおよそ450g程あり(ばらして計測したわけではないのであくまで推測です)、めちゃくちゃ軽量なリムではないのですが、斜度が8%に差し掛かる登りでもあまり重さを感じることはありませんでした。ただし、富士ヒルなどの距離が長いヒルクライムや、斜度が10%以上の激坂ではもう少し軽量なホイールが欲しいですね。まあ、そのためにC36があるわけですが。そのかわり、巡航性能はリムハイトの高さも相まって素晴らしいものがあります。チーム練で使ってみて、正直ズルをしている感覚になりました笑。
一方で以前から乗っていたリムブレーキのバイクではKSYRIUM PRO USTをずっと愛用していました。リム重量が400g(メーカー公表値)と軽量なロープロリムハイトで、WH-R9270-C50とは対照的なホイールです。低速時からの加速やヒルクライムは快適そのもの。斜度がえげつない激坂もこなせます。その変わり、巡航性能はそこまで得意なホイールではありません。リムが軽くハイトが低いので、どうしても時速40km/hあたりを超えてくると頭打ち感がでてきます。
以上、構成が対称的なホイールを使ってみて私が感じたのは、リムはホイール性能や乗り味に大きく影響するということ。もちろん他にもスポークの素材や組み方なども影響しますが、より体感しやすいのはやはりリムによる違いなのではないでしょうか。
あとはカーボンディープホイールは確かに速いけど、それと同時に丁寧なペダリングを求められるなとも感じました。もちろん、今までずっとアルミのKSYRIUMを使ってきたので慣れの問題もあると思いますが、雑に踏んでしまうと余計な体力を使ってしまう印象を強く受けました。KSYRIUMはアルミホイールの中でも乗り味硬めな部類に入るので、単純にC50の方が硬いからという訳でもなさそうです。アルミのリムとカーボンのリムによる使用感の違いによる結果なのかなーと。
ちなみに、2021年の全日本選手権男子エリートで優勝した選手は、WH-R9100-C24-CLを使用していました。そのチームメイトの方によると、C24アルミの方がカーボンホイールに比べてクセがなく、疲れてきた時でも体力を温存しやすいとのこと。
コースや脚力、ペダリングの癖などによってはカーボンよりもアルミの方がパフォーマンスを発揮できる場合もあるというわけですね。
まとめ
ここまでのリムの話をまとめると、
・アルミリムはしなるので乗り心地がよく、カーボンリムは撓みにくいのでパワーロスが少ない。
・リム重量が軽いと加速しやすいがスピードの維持は辛い。リムが重いとその逆。
・リムハイトが低いと加速しやすく、乗り味は柔らかめに。リムハイトが高いとスピードの維持がしやすく、乗り味は硬めに。
・リムハイトが高いと横風に煽られやすくなる。
といった感じですね。
ただし、近年はハイトが高くてもリム重量が軽いホイールも存在していますので、一概にリム重量やハイトだけで性能を図ることは難しいです。あくまで両者のバランスが重要になります。
最後に
自分の目的や用途、そしてなにより相性にマッチするホイールを一発で選ぶことは正直難しいです。今回お話しさせていただいた、リムの違いが走りにどのような影響をもたらすのかを知っておくだけで、ご自身にあったホイールを探しやすくなるのではないでしょうか。ただ、余談でも触れましたが、スポークやハブなどのパーツもホイールの乗り味や性能に影響します。あくまでこういう傾向にあると思っていただき、みなさまのホイール選びに少しでもお役に立てば幸いです。
お茶の水店にご来店いただいた際にはお客様に合う商品を一緒にお探ししますので、是非お気軽にご相談下さい!