ワイズロード東大和店の高橋です。
ワイズロードで取り扱う自転車は"スポーツバイク"です。
「何を今さらそんな当たり前なことを」と思うかもしれません。
通勤・通学用にスポーツバイクを購入する方が増える今、再認識してほしいのは「一般車のように乗りっぱなしはダメですよ」「セルフメンテナンスを怠らないようにしてください」ということです。
納車の際にはスポーツバイクの取り扱いについて説明をしていますが、説明されても忘れてしまうことや、その場では説明しきれないことなどもあるのが実状です。
今回は非常に問い合わせの多い変速トラブルについて。
変速トラブルに繋がる要因や対処方法をご説明します!
初期不良?何もしていないのに変速が上手くいかない
初回点検の際に最も多い相談です。
実際によくあるお問い合わせ内容
「変速が上手く決まらない」
「ギア5,6速あたりでカチャカチャ音が鳴る」
「変速しなかったり次のギアに行ったりしてしまう」
「勝手に変速する」
考えられる原因
原因として一番多いのはズバリ
ワイヤーの伸び
です。これは初期伸びとも呼ばれる現象。
自転車の変速レバーと変速ユニット(ディレイラー)を繋いでいるのは細い金属を束ねて結ったワイヤーです。
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刺繍などに使われる糸と同じ様に金属製のワイヤーであっても強く引っ張られると少し伸びます。
ワイヤーが伸びてしまうと弛んでしまい、変速レバーを「1」動かしても変速機は「0.9」しか動いてくれなくなったりします。
初期伸び自体は一般車でも起こりうる現象なのですが、一般車ではトラブルに発展しないケースも多い一方、スポーツバイクでは変速トラブルに繋がることがあります。
一般車に比べ変速段数の多いスポーツバイクはギア同士の間隔が狭く、チェーン自体も幅が狭く作られています。そのため、一般車以上に調整がシビアで少しでも調整が崩れただけで変速トラブルに繋がってしまうのです。
対処方法
ワイヤーの伸びが原因の場合、実は対処は非常に簡単。ケーブルアジャスターを反時計回りに回すだけです。
スポーツバイクに限らず、変速機能を有するほとんどの自転車には「ケーブルアジャスター」が装着されています。
モデルによってどこにアジャスターが付いているのかはまちまちです。
ロードバイク系は変速機側に。MTB系は変速レバー側に付いていることが一般的。それ以外は本当にケースバイケースです。
MTBコンポではレバー側が一般的
このパーツを反時計回りに回すとアジャスターが出てきます。こうするとワイヤーのテンション(張り)を上げることができます。ワイヤーが1mm伸びてしまったのであれば、アジャスターを1mm出せば原理的には解決です。しかし、もちろん何mm伸びているのかなど分かるわけもないので感覚作業になってきます。
作業手順
①後ろのギアを1番外側(トップ)にします。
②ギアを1段下げ、変速するか確認します。
この時点で変速しない場合はケーブルアジャスターを反時計回りに少しずつ回し、変速するまでアジャスターを回します。(わかりやすいように目印の赤いシールを貼り付けています。)
③変速後も数秒回し続け、異常が無いか確認します。
回している最中、ギアからカチャカチャ音が鳴る場合にはアジャスターを回します。この際(②で反時計回りに回した場合は特に)必ずしも反時計回りに回すのが正解とは限りません。
どちらかに回して、カチャカチャ音が小さくなる方向に回し続けます。間違った方向に回すと音が大きくなって、より変速が狂います。
④ ②,③を繰り返します。
1番内側(ロー)のギアにシフトダウンする際は慎重に行ってください。最悪、変速機が吹き飛びます。
一瞬でも異常を感じたらすぐさま変速レバーから手を離してブレーキをかけるか、シフトアップしてください。
⑤逆にギアを1段ずつ上げ、変速に異常が無いか確認します。
シフトアップしにくいと感じたら時計回りに回すと変速機が外側に動いていきます。
⑥ ②~⑤を繰り返し、一番滑らかに動作するポイントを探します。
文章にすると面倒に見えますが、慣れてしまえばどうということはありません。このケースの場合、車体を確認して1分足らずで解決するケースもあります。この作業は覚えておくと応用も利くため挑戦してみる価値はあると思います。
車体を倒してしまってから変速がおかしい
よくあるお問い合わせ内容
「コケてしまって変速が狂った」
「風で車体が倒れてしまった」
「共用駐輪場に停めていた」
この場合は早めにご相談ください。
放置すると最悪、変速機が吹き飛びます。
考えられる原因
ディレイラーハンガー曲がり。
銀色のハンガーが新品。黒が曲がってしまったハンガー。
スポーツバイクの多くはディレイラーガードがついておらず、変速機がむき出しの状態になっています。
代わりにディレイラーハンガーと呼ばれるパーツが付いていることがほとんどで、これが衝撃を受けた際にフレームの損傷を防ぐ役割を担っています。
車体が倒れてしまったり、駐輪場から出す(出る)際には、出っ張っている後ろの変速機はぶつかって衝撃を受けてしまうことがあります。強い衝撃がフレームに伝わってしまうと、軽量に作られているスポーツバイクはフレームが壊れてしまいます。
そのため、ディレイラーハンガーは敢えて軟らかい金属で作られており、曲がることでフレームへのダメージを抑える役割を果たしています。
しかし、変形した状態で走行をしてしまうと更なる損傷や事故に繋がりかねません。
ハンガーが曲がった状態で変速した結果ホイールに巻き込まれ破損したディレイラー。
対処方法
取扱のあるお店にご相談ください。
基本的にはハンガー交換となります。
工賃:1,760円
一度変形した金属は形を整えても元の性能には戻りません。塑性変形(そせいへんけい)と言いますが、金属の密度に変化が生じてしまったり、組織そのものが崩れてしまったり、肉眼では確認できないクラックが生じている場合もあります。
しかし、ハンガーが曲がった際にすぐに救援を呼べる状況にあるとは限りません。どうしても走らなければならない場合には細心の注意を払った上で以下を参考にしてください。
Lv.1 ロー側のギアは使わない
ハンガーが内側に曲がった状態でロー側に変速をするとスポークに変速機が巻き込まれる可能性があります。
Lv.10 ロー側の可動域を絞る
変速機にはロー側、トップ側の可動域を調整するボルトがあります。Lと印字された方のボルトを絞めていくとロー側に変速できなくなります。
これでスポークに巻き込まれることはありませんが、変速機が斜めっていることには変わりありません。いずれにせよペダリングには注意を払ってください。
Lv.30 予備のハンガーを持っておく
誰がハンガー曲がりなんか対策するねん。
長距離のライドには何があるかわからないもの。ロングツーリングを考えている場合にはパンク修理キットやミッシングリンクと合わせて持っておくと良いかも知れません。
私は4日間で1,100kmのライドを計画したときには一応サドルバッグの奥底に忍ばせていました。
クイックリリースの車体であれば「エマージェンシーハンガー」という応急キットもあります。
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しかしあくまで応急処置。相性完璧というわけではないので、長く付き合うバイクであれば適合するハンガーのスペアは持っておくと良いと思います。
Lv.50 Hey!TAXI!!
諦めの境地。財力の暴力。辺境の地だろうが何だろうがタクシー。正直1番懸命な選択かもしれません。
パンク修理キットを持たない人に「いざというときに困るよ」と言っても「大丈夫大丈夫」と言って聞かなかった人がいました。山のなかでパンクしてしまった彼は2万円払ってタクシーで帰ってきました。
実際にタクシーで移動する際はバイクを乗せられるか電話で確認することをお忘れなく。
また、ワイズロードでは納車時に入れる盗難保険と合わせてロードサービスもご案内しています。これからバイクの購入をされる方は一緒にぜひご検討くださいませ!
https://www.ysroad.co.jp/support/sonota/insurance.html
電動変速機の場合
電動変速機はワイヤーの伸び等は発生しないため、基本的に変速が狂うといったことは起こりません。
それでも何かしらの理由で調整が必要になった場合は
SHIMANO Di2なら[E-TUBE]
SRAM AXSなら[SRAM AXS]
Campagnolo EPSなら[MY CAMPY]
で簡単に微調整が可能です。(対応機種に限ります)
今回は初心者の方向けの記事ですので説明は省きますが対応方法は探せばすぐ見つかると思います。
最後に「スポーツバイク歴が長い人にも知っておいてほしいこと」
冒頭でも書かせていただいた通り、スポーツバイクはセルフメンテナンスが重要です。
昨年SHIMANOが対象型番のクランク無償点検を発表しましたね。
初心者ではない方にお聞きしたい。
「この件、どう思いました?」
正直なところ、「プロの脚力でも壊れない製品が我々パンピーの脚力ごときで壊れるわけがない」「高品質・高耐久!」と過信してはいませんでしたか?
形あるものいつかは壊れます。プロがワールドツアーを走っても製品に問題が発生しないのは、常にメカニックが付きっきりで異常がないかを逐一点検しているからです。一般ユーザー様の手に渡った商品もわれわれスポーツバイクスタッフが管理できれば良いのですが、もちろんそんなことは不可能です。
SHIMANOクランクの一件は私はポジティブに捉えています。「永遠なんてものはないんだぞ」という意識を再認識させてくれるいい機会になったと。
どんなに良い機材を使っていようとも、セルフメンテナンスは大事です。クランクに限らずタイヤやチェーン・スプロケも消耗品ですし、フレームだって未来永劫強度が低下しないなんてことはありません。
それに気付くにはまず大事なのは車体を掃除することです。
https://ysroad.co.jp/support/tech/easy_mainte/index.html
今回のディレイラー調整も含め、なにかわからないことがあればいつでもご相談ください!
今後、こいう言ったTECH関係のちょこちょこ書いていこうかと思ってます。
「こんな記事を書いてほしい!」みたいなことがあれば教えて下さい!公開できる範囲で記事にして皆さんのお悩み解決できたら嬉しいです!
それでは!