ワイズロードオンラインの石澤です。
ホイールは自転車の走りの中核となるパーツ。
変えることで自転車の性能や性格を激変させる効果があるのですが、意外とそのことが知られていなかったり、自転車に近い金額がかかることから二の足を踏んでいる方も多いようです。
そこで、実際にホイール交換をして走ったスタッフからの生の声をお届けするのが、今回ご紹介する記事でございます。
第2弾は、川崎店のヒルクライム好きスタッフでございます。
川崎店 鈴木 誠一のWHEEL CHOICE
ライドプロフィール
登ることが好きでコロナ前はよくヒルクライムイベントに参加していました。休日のライドもいつも獲得標高は1,000mを超えます。未だにロードはリムブレーキモデルを愛用していますが、これには「気に入ったディスクロードが見つからない」「乗り換える予算がない」などとはまた異なる理由があるのです・・・。
車体
今回ホイール交換をする車体は、アメリカンブランドを代表する一角、SPECIALIZEDの「S-WORKS TARMAC SL5」。
歴代のTARMACは剛性感がまちまちでしたが、このSL5になって「一定のしなやかさを持ちながら、硬さ以外の要素も使って前に進むバイク」に仕上がりました。
残念ながらワイズロードでは取り扱いのないブランドですが、ホイールなどのチューンナップは店舗でお承りすることが可能です。
ホイール交換の動機
TARMAC SL5に装着されていたのは、同社傘下のホイールブランド、ROVALの「RAPIDE CLX 40」。そう、カーボンホイールです。
「カーボンホイールなら交換する必要はないんじゃないの?」と思う方も多いでしょうが、鈴木が気になっていた点がいくつかありました。
まずはブレーキ。ROVALのリムブレーキホイールはあくまで一般的なブレーキパッドあたり面の加工しか施されていません。
鈴木の好むコースはヒルクライム。峠道の中には登っている途中で下り返すセクションも多く、また当然ながら、登ったらその分下らないと帰ってこれません。
峠に多いテクニカルな下りでは、カーボンホイールのブレーキ性能には様々な不安があったのです。
また、反応性にも気になった点がありました。
ROVALのホイールにはDTのフリーボディが採用されています。標準装備されているフリーボディでは、ホイール1回転当たり18回のコンタクトがあるラチェットが使用されています。
一般的なロードユースでは十分足りますが、ヒルクライムの「ここ!という瞬間に踏み込んだ際の反応性」という意味では、18ノッチでは足りないケースもあるのです。
現在でこそノッチの多いカスタムラチェットも発売されていますが、当時はその選択肢がありませんでした。
そんななかで、試乗する機会があり、よく走るコースを走ってみたところタイムの短縮が実感できたこと、さらに以前使用していたMAVICのアルミホイールの感触が印象に残っており、2種類のホイールを新たに導入することとなりました。
きょうのホイール
そんな目的に合わせ、鈴木が選んだホイールは、リムブレーキ用カーボンホイールのハイエンドモデル、
KSYRIUM/COSMIC PRO CARBON SL UST
画像は「KSYRIUM PRO CARBON SL UST」ですが、コースなどに合わせて2種類のホイールを選択。
どちらも MAVICがカーボンホイールとして初めて発売した、ロードチューブレス「UST」規格に適合したホイールです。
それまで装着に癖があり、だれでも扱いやすいとは言えなかったチューブレスタイヤを身近なものとしました。
KSYRIUMはヒルクライム用ホイールとして、高剛性で外周部が軽量なフルカーボンホイールとして有力な選択肢として魅力的なモデル。
COSMICは平地から山岳まで、オールラウンドに対応できるモデルでございます。
インプレッション
① KSYRIUM PRO CARBON UST
鈴木は過去に、アルミリムの「KSYRIUM PRO EXALITH SL」使用していた時期があり、加速性能が高くお気に入りのホイールでした。
その印象が強かったので、ヒルクライム決戦用として軽量カーボンホイール、面ラチェットで掛かりの良い「ID360」の反応性期待して購入しました。
高い加速性能と登りでのダンシング時のバイクの左右への振りの軽さを感じられます。
速度維持はCOSMICには適いませんが、18ノッチだったROVALから、MAVICのID360は倍以上の40ノッチに。
中速域までの加速性能と踏み込むと瞬時に進んでくれるID360(COSMICも同じ)の恩恵が感じられます。
まさにヒルクライムに特化したホイールです。
② COSMIC PRO CARBON SL UST
ROVAL(1,375g)よりも重量増(1,490g)ですが、剛性も硬過ぎない所がハマりました。 登りでの軽さはROVALには劣るものの平坦での速度維持はCOSMICの方が高く、トータルバランスが良かったです。
良く走るのは、獲得標高1600m、山岳も含めた130km程度のコースです。
5時間以上はかかるコースなのですが、ディープリムで重量が増えてなお、ROVALよりも15分程度もタイムが向上しました。
重量が増えることで単純な(斜度の高い)登りでこそ速度は落ちるものの、一定以下の斜度だったり、コースの中に時折現れる平坦路や下り返しなど、総合的な要素で、登り基調のコースでも速く走れるようになりました。
買う前に心配していたこと、実際に買ってみたら?
ブレーキ性能
カーボンホイール同士での購入ということで、「新たに発生する懸念点」はあまりなかった鈴木ですが、「カーボンホイールの弱点がそのまま残っていたらいやだな」という点は残っていました。それがブレーキ性能です。
実は以前使っていたROVALでは、ブレーキをかけ続けた際に発生する熱に耐えきれず、リムが変形してしまったのです。
しかしMAVICならそんなトラブルとは無縁になりました。
両モデルに採用される「iTgMax」という技術は、カーボンに含まれる樹脂の組成を考え抜き、熱に強いリムになっています。そのおかげでブレーキをかけてもリムが変形するようなトラブルはこれまでに遭遇していません。
またiTgMaxのリムはブレーキパッド面をレーザーで処理しています。これがブレーキ性能そのものも向上させています。そのことが、
① よく効くので、ブレーキをかける時間が短くて済む→リムとパッドの摩擦熱が発生する時間が短く、放熱できる時間が長くなる→熱のトラブルが少ない
という流れにつながるのです。
フリーボディのグリスアップ
もう一つは、「ID360」を採用したフリーボディのメンテナンスについて。
ほとんどの部位で「メンテナンスフリー」と呼んでいいMAVICのホイールですが、「ID360」のラチェットシステムは雨や洗車など、水に対して繊細です。
「1000km、もしくは半年走行のいずれか短いほう」をめどにグリスアップが必要なことだけは気に留めておいた方が良さそうです。
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幸いにして、ID360のフリーボディは手で引っ張るだけで簡単に着脱が可能。
グリスも小分けで販売しているため、日々のメンテナンスを怠らなければ大丈夫です。
剛性が高すぎない?
また、鈴木がリムブレーキを愛用し続けるのは、ホイール周りにしなやかさを求めているため。
ディスクブレーキで一般的なスルーアクスルは剛性が上がりますが、そのことがしなりを減らし、リズム感を伴ったダンシングがしづらいと感じる方もいるようです。
そのことから硬すぎるホイールは好みではないので心配していましたが、購入前に試乗ホイールを使用できたことで心配なく購入しました。
今回ご紹介した鈴木が在籍する川崎店では、MAVICの試乗ホイールを常設しています。
気になったモデルを実際にお試しいただければ、その威力を実感いただけ、不安なことも事前に確認できますね!
ホイール換えると走りが変わる!
自転車を買ったとき、きっとあなたはこだわり抜いて一台を選び、それから乗り始めたはず。
そんなお気に入りの自転車の能力をさらに進化させる一番効果的なアイテムがホイールです。
「山登りを軽やかにこなしたい」
「平地を高速で駆け抜けたい」
「乗り心地をよくして長距離を疲れず走りたい」など・・・
どんなホイールがあなたにぴったりなのか、併せて何を換えればいいのかは、こちらのホイール大全をご覧いただければばっちり!
さらに深くホイールのことを知りたいときは、店舗スタッフに、お店やチャット窓口で質問しましょう。