横浜ワールドポーターズ店松野です。
最近横浜店ではSRAMの完成車が人気です!
完全無線だったり1レバー1ボタンでシンプルな操作感がSHIMANOとは違いますね。
実は大きく違うのはそれだけではなく、使用されるブレーキフルード(オイル)の種類も違うんです!
ミネラル or DOT
まず初めに細かい事なのですが油圧ブレーキに使われる油は潤滑油ではなく作動油なので、「オイル(Oil)」よりも「フルード(Fluid)」と呼んだ方が正確です。
そんなブレーキフルードにも種類があり…
①ミネラルオイル…SHIMANO、MAGURA、TEKTRO、SRAM(ごく一部)、Campagnolo等
自転車ではかなりメジャーなのがミネラルオイルです。石油由来の油であり、DOTと比べると塗装やシール(ゴム)への攻撃性が低くメンテナンス期間が長いのが特徴です。「鉱物油」と言うのはものすごくざっくりした区切りです。実際にはブレーキメーカー毎に専用のオイルが販売されているので必ず純正品を使用する必要があります。
余談ですが、作動油なのに「ミネラルフルード」とは呼ばれません…。関係あるのかわかりませんがSHIMANOのミネラルオイルのSDSでは潤滑油と言う扱いになっていました。
②DOTフルード…SRAM、HOPE、HAYES、BRAKING、等
DOTはDepartment Of Transportation(=アメリカ合衆国運輸省)の略です。要はアメリカの工業規格みたいなもので、日本で言うところのJISに近い感じです。車やオートバイではほとんどがDOTフルードを使用しています。主な成分はグリコールなので、油…と言うよりはアルコールの一種なんだとか。
DOT3 / DOT4 / DOT5.1と規格が分かれており、沸点(ウェット/ドライ)や粘性について細かく決められています。自転車では使いませんがシリコンが主成分のDOT5まで存在します。
自転車の場合DOT5.1のみか、DOT4と5.1のどちらかを使うものがほとんどです。
ミネラルオイルとは違い、DOT規格で細かく定められているので他のメーカーのDOTフルードを使用しても問題ないケースがほとんどです。とはいえ何かトラブルがあると困るので基本的には純正品を使用するのが間違いないですね。
③水
完全におまけです(笑)ドイツのBrake Force Oneと言うメーカーで不凍液を添加した水を使用する変態ブレーキが存在します。水はオイルよりも圧縮率が低いのでカッチリとしたタッチなんだとか…?
何が違うの?
大きな違いは吸湿性です。まず、ミネラルオイルは油なので普通は水と混ざりません。当たり前ですね。
しかしDOTは湿気を吸う性質があるので水と混ぜるとこんな風に綺麗に混ざるんです。その際に化学反応が起きるのか、白っぽくなってほんのり暖かくなります。
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年に一度はフルード交換!!
上記の通り、湿気を吸う性質のあるDOTオイル。密閉されているはずのブレーキシステムですが、時間が経つと空気中の湿気を吸って劣化します。
新品のフルードは薄い黄色なのですが、時間が経つと色が濃くなってしまいます。もっと放置すると黒に近くなってきますし、湿気の影響でブレーキ内部が傷んだり、成分が結晶化して詰まってしまう事もあります。
湿気を吸った際のデメリットはいくつかありますが、まずは沸点が下がってしまいます。規格としてはDOT5.1のドライ沸点(水分を含まない状態)は260度以上でウェット沸点(吸湿率3.7%/劣化した状態)は180度以上と定められています。
じゃあ実際にブレーキの温度はどれぐらいかと言うと…
SHIMANOの資料によるとローターの表面温度は400度を超えることもあるんだとか!
しかしこれはあくまでローター表面の温度です。パッドのバックプレートやキャリパー本体からも放熱しますし、ピストンやフルードに熱が伝わりにくい工夫がされているので実際のフルードはもっと低い温度になります。でも劣化して沸点の下がったオイルで長い峠を下るのは怖いですね!
もう一つのデメリットはフルードの圧縮率です。湿気を吸うとオイルの圧縮率が上がる(フワフワになる)のでブレーキのタッチが柔らかくなってしまいます。吸った水分の量だけフルードも膨張するので、何年も放置するとブレーキレバーの遊びが減ってパツパツなブレーキタッチになってしまう事もあります。
交換はお任せください!!
専用の工具(エア抜きキット)さえ揃えてしまえば、メンテナンスが得意な方であればフルード交換は自分で出来てしまうかもしれませんが、あまりオススメできません…。
安全に直結するブレーキなので確実な作業が必要である、と言うのも理由の一つなのですがもう一つはDOTフルードによる塗装へのダメージです。DOTフルードは攻撃性が高い為、塗装に付着したまま放置すると塗装にダメージを及ぼします!
これは今お預かりしている、数年使っているお客様のブレーキなのですが、リザーバーのふたのフチがなんだかガビガビになってしまっていますよね。これはリザーバーのふたとダイヤフラムの間に残ってしまったDOTフルードによるダメージなんです。SRAMのMTB用のブレーキは新品で取寄せても最初からここにフルードが浸み込んでいることが多いんで仕方ないのですが……
「拭き取ればいいんでしょ?」と思うかもしれませんが、特にロードの場合はうっかり垂らしてしまうと複雑なレバー内部に入ってしまう事も。そうなると内部まで綺麗にすることはとても難しくなってしまいますので、フルードをこぼさないようにとても慎重に作業しなければいけないんです!
「うわ、めんどくさそうだなぁ…」とほんの少しでも思った方は是非お任せください!
DOTフルードを使用する代表的なSRAMでは少なくとも年に一回の交換を推奨しています。乗らなくても数年放置するだけでブレーキタッチに異常が出てしまう事もあります。
ミネラルオイルを使うSHIMANOも1~2年に一度は交換した方がいいのですが、実際のところ数年間放置してても普通に使えちゃうことも良くあります。DOTの方がこまめに交換が必要なのでご注意ください!!