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【より遠くを目指して走るために】実地で意識していること 編

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池袋本館】長山 靖 22年08月05日

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自分の脚力だけをエンジンとして、大空を飛翔する鳥のように、行動範囲が大きく広がる。

自転車の大きな魅力の一つです。

こんなに遠くまで、自力で来れてしまった!

という、大きな感動をもたらしてくれます。

走ったことのないコースを目指して。
行ってみたいあの街、あの山向こうを目指して。
憧れの聖地コースや、気になるイベントの完走を目指して。

それぞれの遠くを目指して、ぜひ走り出してみませんか!

 

いざ、実地!そこで意識していること

前回は、まずはちょこっとずつ脚力アップ作戦で遠乗りに備えてみよう、というご提案をしてみました。

【より遠くを目指して走るために】ちょこっとずつ脚力アップ作戦 編

今回は、実際の遠乗りで私が意識している点について、思いつくまま列記してみました。

毎回のライドで全ての点を網羅しているわけではありませんし、細かいところは人それぞれかと思いますので、あくまでも参考材料として頂ければ幸いです。

※実地に臨むに当たり、自転車の点検整備や携行品、補修用品の準備が整っているのが大前提です。

その辺りは別記事リンクを貼る予定です。

 

もくじ

完走し甲斐のあるコースプランにする

コースの概略を頭に叩き込んでおく

サイクルコンピュータとうまく付き合う

出力はほどほどに、変動は抑えめに

休憩は計画的に

ちょこちょこ補給

どうしても眠い時はプチ仮眠してみるのも手

動物と遭遇の心配について

トラックの恐怖を和らげる一工夫

天気予報の雑感

心の拠り所となるライド経験を持つ

止める勇気

輪行脱出出来るスジをうっすら意識しながら走る

逆境でのテンションの上げ方

無事に帰る

あとは実践あるのみ

心に勲章を

 

完走し甲斐のあるコースプランにする

漠然と「遠くを目指してみよう」でも良いのですが、そこに何かテーマや目的があると、走り続けるモチベーションを保ちやすくなります。例えば「〇〇〇km越えを目指す」「〇〇一周」「〇〇街道走破」など。

ある4月中旬、東京では桜花が完全に散った頃。ふと「桜前線て、自転車で追いかけられるのかなぁ?」と思い立ち、北へ向かって走り出したことがありました。進んでいくうちに、だんだんと散り残っている桜花に遭遇するようになり、桜前線エリアに迫りつつあることを実感。ワクワクして走り続け、最終的に福島県、日本三大桜の一つ・三春の滝桜に至りました。

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その模様は

【旅の思い出】桜前線追っかけライド

に纏めましたが、走り終えた時の走行距離は305kmでした。桜前線を追いかけるうちに、結果的に300km越えのロングライドとなったのです。ただ300km走れ、と言われたら、モチベーションは続かなかったかも知れません。

 

コースの概略を頭に叩き込んでおく

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長距離になればなるほど、コースの様相は様々に変化していきます。走る道筋の概略、主要地点間の距離、山岳地帯の登坂距離、高低差など、要点を調べて頭に叩き込んでおくと、走りながらペース配分や多少のプラン変更など脳内計算しやすくなるのでオススメです。

「紙マップに記して携行」「スマホで都度調べる」といったことも出来ますが、もし屋根も無い田舎区間で不意の雨に当たったりすると、濡れを防ぐために使用不能、なんてこともあります。記憶に入れておけば、いつもどんな時でも、情報の呼び出しが可能です。

事前に要点を把握せず、きつい目に遭った例をご紹介します。

ロングのIRONMANトライアスロン(スイム3.8km、バイク180.2km、ラン42.2km)に初挑戦した時のことです。ミドルの大会からいよいよロングへステップアップ、ということで、その距離ばかりを気にしていました。ところが、いざスタートしてバイクパートを走ってみたら、やたらと坂が現れる。島での大会なので、起伏があるのは察しがつきましたが、想像以上でした。しかも、バイクゴールまであと僅かという地点が、また容赦の無い急登坂で「なんじゃこりゃ!?」と打ちのめされました。

後年、獲得標高という概念を知って、ふとこの時のバイクコースを調べてみたら、なんと2000m前後ありました。知らぬが仏、が功を奏した面もあったかも知れませんが、長距離を目指すのであれば、やはり要点は把握しておくのが無難かと思います。

 

サイクルコンピュータとうまく付き合う

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サイクルコンピュータは、ペースの把握や記録取りなどで大いに役立ちます。例えば、

・峠の頂上まで残り〇km、今のペースが時速約〇kmだから、このまま維持すればあと〇分位で登り切れる
・ここまでの走行距離は〇kmだからゴールまでは残り〇km、今の巡航速度なら、あと〇時間休憩に費やしても大丈夫
・ライド後、落ち着いた時に記録を振り返って、感覚的にはこうだったが、数字的にはこうだった、などと分析

・・・など、何かと重宝します。ライドの日記帳として残っていくのも良いですね。

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GARMIN上位モデルは、昭文社全国詳細道路地図(自転車道対応)最新データを収録し、デバイス上での目的地検索やコースポイント登録、ナビゲーション時の転換点案内やリルートに対応するフルスペックナビゲーションを備えたスグレモノです!

ただし、表示される数字に囚われ過ぎるのは禁物です。例えば、いつも平均時速25kmだから、いつでもそれで、なんて具合に数字に拘ってしまうと、マイペースを見失ってしまう恐れがあります。同じ平坦路であっても風向き次第で必要なパワーは変わりますし、その時々の体調によっても維持出来るペースは変化してきます。

また、しょっちゅう画面ばかり見過ぎるのも、気が散ってしまって精神衛生上よろしくありません。ほどほどに、が肝心です。

ある時、真正面にドーンと大きく富士山が見える芦ノ湖畔を仲間と走ったのですが、後で「富士山きれいだったですね~」と話を振ったら「え?富士山?メーターの心拍数ばかり見ていて気が付かなかった」「ええ~!?もったいない!」なんてことがありました。心拍数やパワーも、指標として使えるのですが、その変化ばかり見つめていると追われて大変、景色どころでは無くなってしまいます。ある程度は、自身の感覚頼みで調整することも大事にした方が良いと思います。

 

出力はほどほどに、変動は抑えめに

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序盤の元気なうちに飛ばしたり、登坂で急に踏んで頑張ったりしてしまうと、後になってガタッと疲労に襲われたりします。腹6~7分くらいまでの強度に止め、なるべく出力の変動を抑えて進む方が長持ちしやすいです。

ある時、約半月の間をおいて、二つのライドを走りました。

一つ目はヒルクライム大会参加の27km、獲得標高1100mコースで、終始全力走。翌日は身体がバキバキで、重い疲労に襲われました。

二つ目は、140kmで3つの峠を越える獲得標高3000mのコース。こちらはマイペースで、頑張り過ぎないように出力の変動を抑える意識で走りました。そうしたら、翌日は「運動したな」という疲労感はありましたが、しんどくは無いレベルで済んでしまいました。

コースが違うので単純比較は出来ませんが、長距離抑えめ走よりも短距離全力走の方が遥かにダメージが大きいのだということを痛感した2ライドでした。

 

休憩は計画的に

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休憩のタイミングや休む時間は、最終的には人それぞれですが、まずはある程度ルールを敷いてみた方が、ペースを保ちやすいかと思います。

タイミングについては、例えば「約一時間に一回は小休止を入れるようにする」とか「約50kmごとに少し長めの休憩を取る」とか。そうしないと、元気なうちはついつい休憩を取らずに走り過ぎて、後でバテて大ブレーキ、なんてことになったりする恐れがあります。また、疲労が深まる後半は、ルールがあれば「あと〇分位走れば休憩タイムだ」という具合に、心の拠り所となってくれたりもします。ただし、コンビニを筆頭に休憩ポイントの位置によって多少は左右されることになりますので、あまり杓子定規にならず柔軟に。

休む時間については、あまり長く休憩すると緊張感がオフになってしまい、調子を戻すのに難儀します。1回につき10分以内、とか、5回に1回は少し長く取る、など、ある程度決めた方がペースを崩しにくいです。特に疲れてくる後半は、休憩を取ると腰が重くなって再発進が鈍くなりがち、そこで時間ルールがあれば、えいっ!と奮い立たせやすくなります。

また、仮に1回の休憩が10分だとして、6回取ると1時間。1回の休憩が5分の場合とはそこで30分の差がつきます。平均時速が20kmだとすると、そこで進む距離が10km変わってきます。積もり積もれば、まあまあ差が開きますので、より長距離を目指すのならば時間の割り振りはしっかり意識した方が良いです。

 

ちょこちょこ補給

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サイクリングは、全身運動かつ非常に長い時間続けやすい性質のため、どんどんエネルギーを使います。そのため、お腹が空いたら食べる、のどが乾いたら飲む、では、摂取→活用の流れが追い付かず、供給エネルギー切れを起こしてしまいます。信号待ちの時など、意識してちょこちょこ補給するのがオススメです。

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個人的に好きなのは井村屋のスポーツようかん。携行しやすく、食べやすいパッケージで、味も至って普通の和菓子。ガツンと濃い補給食もいろいろありますが、まずはこういうソフトなところから開拓してみるのが喉を通りやすいと思います。池袋本館でも絶賛販売中!

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元気なうちは食欲旺盛で、一度にたくさん食べる、こってりなものをガッツリ、などの欲求が湧きがちですが、なるべく避けた方が無難です。食べたら、お腹で消化、吸収活動が始まります。がっつり食べると、その処理のためにエネルギーが喰われてしまいますし、その状態でまた走り出すと、身体が消化活動に専念出来なくなり、胃腸の負担となってしまいます。

自然体そのものである野生の肉食動物が、お手本になるかも知れません。彼らは、お腹が空き始めた時に、食べるために狩りを始めます。そして、お腹が満たされたら休みます。そもそもお腹いっぱいでは、狩りの動きは満足に出来ないことでしょう。

たらふく食べても走れる、というのは、乗り物である自転車ならではですが、自然の摂理から見たら、ちょっと特異な性質なのかも知れません。

 

どうしても眠い時はプチ仮眠してみるのも手

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長丁場になればなるほど、疲労で眠くなったりすることがあります。暗闇の黒ばかりで景色の変化が乏しい夜間や、夜通し後のポカポカしてきて気持ち良くなる午前中など、睡魔に襲われやすいシーンが出て来たりもします。そんな時は、僅かな時間でも仮眠してみるのも一手です。

ある時、寝不足状態で秩父山中へ走りに行ったのですが、ひたすら登坂のルートをリズムに乗って漕ぐうちに、眠くて眠くてたまらなくなってしまいました。しかし、周囲は山深く獣の気配濃厚、自転車から降りて道端に休むのは、躊躇われました。そこで、開き直って、自転車のトップチューブに股がって立ったまま、ハンドルに突っ伏して寝ました。自転車から降りていない、というだけで、だいぶ心強さが違うのです。数十秒か、はたまた数分か?ハッと目覚めたら、思いの外スッキリしていました。再び走り出してほどなく、道にたむろするサルの群れと遭遇し、やはり道端で休まなくて良かった、と思いました。

また別の時、日没後の真っ暗な柳沢峠道で、すぐ周囲で獣が鳴いている状況にも関わらず、頭痛が酷くなって走れなくなったことがありました。その時にこの方法でプチ仮眠してみたら、スッキリ頭痛が抜けてくれて、また走り出せたこともありました。

 

動物と遭遇の心配について

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遠乗りすれば必ず行き当たる山岳地帯、特に山深い林道などでは、動物の気配を濃く感じて、ばったりヤバいのに遭遇しやしないかと緊張感が湧いてきたりします。そんな時、どうすれば良いか、正直なところ正解は分かりません。ただ一つ、あまり遭遇したくなければ、もしかしたらこれアリかも?と個人的に思ったことがあります。それは、そういう場所の、特に先の見通せないカーブでは、あまり静かに、かつ速めには駆け抜けない方が良いかも知れない、ということ。自転車はエンジン音が無く静かで、かつそこそこ速いので、動物が接近に気付き難いという面があるのかな、ということです。以下、いくつか例を挙げてみます。

・長野県のとある林道を登って進んでいたら、カーブを曲がった少し先の道端に、いきなりアライグマ三匹がたむろしていました。こちらの進みが静かで、かつカーブで視界が遮られていたため、急な遭遇という形になってしまい、お互いにびっくり。三匹中、二匹は逃げ出したのですが、なんと一匹がこちらに向かって駆けてきました。そのカワイイ見た目とは裏腹に狂暴だと知っていたので、まずいっ!と思い、とっさに自転車のハンドルを持ち上げて方向転換して避けようとしました。そうしたら、アライグマの低い視点から、前輪がグワッと持ち上がったのが脅威に見えたらしく、ひゃー!という感じに驚きながら飛び上がって、そのまま逃げて行ってくれました。その足音が、カツカツと固そうな音で、攻撃されなくて良かった、と思いました。

・大弛峠に登る途中で真っ暗になった時、心細くて、ひたすらベルを鳴らしまくって進みました。そうしたら何にも遭遇せず、20時半頃、無事に峠の山小屋へ到着。そこで小屋のご主人と話をしたら「この時間に上がってきたら、必ずと言って良いほどシカに遭遇するんだが・・・」と言われ、あ、ベル効いていたのかも?と思ったことがありました。

・完全日没後の麦草峠の下りで、同行の仲間は下りが得意なこともあって、シューッと速く駆け下りていきました。私は下りは得意ではなく、真っ暗でもあるので、ライトをビカビカ、ノコノコ慎重に下りました。夜間は獣が出やすくなるので、敢えて独り言を呟いたり、ベルを無駄に鳴らしたりして、存在を主張しました。そうしたら何にも遭遇せず一安心。ところが、後で仲間に話を聞いたら、獣の群れにばったり遭遇したのだそうです。動物にとっては、いきなり静かに速く自転車が現れて、意表を突かれた形になったのでしょう。

・秋田の山中の坂を、私の妻、数十メートルほど遅れて私、の順に、ゆっくりペースでスーッと下っていた時の事。あるカーブを曲がったところで急に妻のペースがガタ落ちしたので、何かと思って追いついて聞いてみたら「道の先、クマが半分草むらから出ているのが見えた。急に止まれないので、鈴を鳴らしながらスピードを落として近づく形になったが、クマがプイッと身を翻して草むらに消えて行った」とのこと。

もしもここでスピードが速めだったら、もっと急に接近する形となり、クマにとって不意打ちのようになっていたかも知れず、そうなったらどうなっていたのか・・・と、考えさせられました。クマは、基本的に人を恐れているらしいのですが、急に遭遇すると「襲われた」と受け取ってかえって狂暴になるのだそうです。

 

これらの経験から、静か、速い、で進んでいると、特にカーブの先で遭遇率が上がるのかも知れない、という気がしてきたのでした。ただし、こればかりは本当に正解がわからない(というか無い?)ので、こういう例があった、程度の記載であることをご容赦ください。

余談ですが、最も怖いクマについては、ヒグマ猟師だった姉崎等さんの談話が収録された「クマにあったらどうするか」(ちくま文庫)という本が、現場ならではのリアルな情報が盛り沢山で、大いに参考になりました。

 

トラックの恐怖を和らげる一工夫

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遠乗りしていると、どうしても物流の大動脈・主要国道を走るシーンが出てきます。そこで、バンバン走るトラックがデカくて怖くて危ない!となったりすることがあります。むしろ動物より怖い!?確かにその一面はあるのですが、気の持ちようで印象は変わります。

東京から一気に名古屋を目指し、仮眠無しで夜通し走った時のこと。夜中?早朝?3時半頃、街道沿いのコンビニへ休憩inしました。駐車場には長距離トラックが並び、ドライバーさんが運転席で仮眠している姿が見えました。その様は、戦士のささやかな休息、という感じで、無性に、お疲れ様です!という気持ちが湧きました。こちらは遊びで走っている身とはいえ、不眠で夜通し走るのは楽ではありません。その状況が、長距離ドライバーさんの苦労を濃く連想させたのです。

トラックが多く走っているという事実は、変わりません。それならば「お先にどうぞ。ご苦労様です」くらいのスタンスでいた方が、スッキリすると思うのです。

 

天気予報の雑感

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長時間の遠乗りで気になる点の一つが、時間や場所で変わりゆく天気。それを予測する際に天気予報を頼るわけですが、これまで見続けてきた中で、私なりに感じたことをご紹介してみます。

 

・天気マークより時間帯別予報

天気マークはパッと見て分かりやすいのですが、雨のち曇り、とか、晴れのち雨、など、二つまでの天気の組み合わせしか表示されません。しかし、一日は24時間あり、そんな単純な天気の推移で終わることは多くありません。晴れのち雨のち曇り、かも知れませんし、曇りマークなのに思いのほか日差しがある、なんてこともあります。晴れのち雨マーク、なんて見せられると「雨か、ダメだ」なんて思いがちですが、実は雨の時間帯が夜のみで、活動する時間帯は雨の気配すらない、なんてこともあります。もう一歩踏み込んで予想するには、時間帯別の詳細予報を見た方が良いです。

・天気予報というより天気実況?

ライド前夜の午前1時頃、天気予報を最終確認。晴れ予報で、安心して就寝。その約4時間後、起床したら雨がザーザー降っていました。慌てて予報を見たら「午前中は雨」という内容に変わっており、もはや予報ではなく実況ではないか、と思いました。おそらく情報更新タイミングの影響もあったのでしょう。予報はあくまで予報、過信は禁物なのだと改めて痛感したケースでした。

・天気予報サイトによって見解、表現が異なることがある

ライド前日に予報を見て、判断に困る微妙な時があります。例えば「降水確率40%」は降りそう、という印象を与えますが、冷静に考えたら半分にも満たない確率です。これで降らなかった時は、少なからずありました。こういう微妙な時は、複数の天気予報サイトを比較して判断するようにしています。サイトによって内容や表現が微妙に異なるもので、三社三様、なんて時もあります。

・天候急変時は雨雲レーダーで予想

予報サイトの雨雲レーダーを開くと、少し先までの雲の動き予想をマップで見ることが出来ます。急に怪しい天気になってきた、という時などにこれを見ると、雨雲の範囲や流れる方向などの予想を見ることが出来、「少し雨宿りすれば大丈夫そう」「こっち方向に向かえば雨雲から逃げられそう」といった判断の材料となり得ます。

ただ、たまに「レーダーに写っていないけど降っている」「新たな雨雲が湧いてきて予想と違ってきてしまった」などということもありますので、過信は禁物です。

・風向き予報は割と正確かも

サイクリングに大きな影響を及ぼすのが風向きと風速です。サイトによっては時間帯別予報に風向、風速を併記しているものがあり、参考にしています。あくまで個人的な印象なのですが、これの精度はまあまあ高いのかな、と感じています。

例を挙げると、平坦で遮蔽物の無い霞ケ浦ライドの前日、この地域の風向風速予報を見たら、午前中は穏やかだが午後から西寄りの強風が吹く、と出ていました。それを信じ、西から東へ向かうルートを取ってみました。そうしたら見事その予報は的中。穏やかだった午前中から一転、昼食休憩を取っている間に強い西風が吹き始め、あとは風に背中を押されながらゴールへ駆けることが出来ました。

・近い地域でも天気が分かれることがある

笹子峠旧道を越えた時の事です。大月側は曇天で、降雨が心配されるような暗い空模様でした。ところが、峠の隧道を越えて甲府盆地側へ降りて行ったら、急に晴れて青空が広がりました。天気が回復したのかな、と思ったのですが、同タイミングに輪行で動いていた仲間から「車窓を見ていたら、笹子トンネルの前後でいきなり空の色が変わって驚いた!」と聞かされ、山が天気を分けていたのだと気づきました。広域を走り回る際は、各地の天気をチェックした方が良いのだと改めて感じました。

 

ここで挙げた例や試案は、あくまで個人的見解です。近年は天候の急変が激しくなったり、季節外れの気候がざらになったりと、更に読みづらくなっていますので、都度、最新情報にて判断して頂ければと思います。

 

心の拠り所となるライド経験を持つ

一度だけでも良いので、それぞれの脚力レベルの中で「今回は限界近くまで頑張った!」と思えるようなライドの経験しておくことをお勧めします。手っ取り早いのは、グランフォンドやブルべなどのロングライドイベントに参加すること。個人で走るよりもイベントの枠に入った方が、完走のモチベーションを保ちやすくて良いと思います。

頑張って挑戦的な長距離を走り切った経験値を持つと、後々のライド時「あの時あれだけやれたじゃないか」という心の拠り所となってくれるので、気持ちに余裕が生まれます。そうすると、どんどん出かけやすくなりますし、更なる遠乗りの世界が見えてくるようにもなります。

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私が一度のライドで走った最長距離は、今のところ東京~名古屋の388.4km。この経験のお陰で、例えば100マイル(160km)走っても、まだ半分にも満たない、なんて具合に、気持ちの切り替えが出来ます。長距離長時間走っていると、不測の寄り道や天候変化、トラブル等で時間に追われることが出て来やすくなりますが、そんな時に気持ちの余裕作りの役に立ってくれます。

 

止める勇気

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まだ20代前半の若かりし頃。ある8月の暑い日に、ふらりと東京を出発。当時の勤務地前を通っている国道1号を、ひたすら進んでみよう、と思い立ったのでした。途中で「名古屋を目指してみよう」となり、そこから夜通し走り、浜名湖の辺りで朝日を浴びていました。そのまま愛知県へ突入しましたが、日差しはどんどん強くなり、気温は上がる一方。前日の元気なうちは暑くても平気だったのですが、徹夜で走った身では、抵抗力ががた落ちしていました。体温調節の働きが落ちていたのでしょう。どんどんえぐられるように消耗していきました。しかし、目標と定めた名古屋までは残り40km、ここまでせっかく320km位来たのだから、頑張ろう、と、変に粘ってしまいました。

とある信号に差し掛かるタイミングで赤に変わり、停止せざるをえなくなったのですが、そこで「ビンディングを外すのは大変だから、倒れよう」と自ら考えて、自ら倒れました。まともだったらそんなことは考えないはずですが、その刹那は、そう考えたのです。そこまで至ってようやく「これは異常だ、このまま進めば、道端で行き倒れて誰かに迷惑が掛かるだろう」と思い、輪行で脱出しました。若気の至りでした。

挑戦的に距離を伸ばそうとすると、ついこのように頑張り過ぎてしまうかも知れませんが、くれぐれも無理は禁物。時には止める勇気も必要です。 

 

輪行脱出出来るスジをうっすら意識しながら走る

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地方の長距離に行く際は、うっすらとコース最寄りの鉄道路線を把握しておくと、万が一の時、それで輪行脱出出来る、という安心感が湧きます。また、地元まで帰れる終電がどの位の時間帯なのか、ざっくり把握しておくと、なお安心です。

ある時、輪行ビギナーの友人と一緒に走りに行ったのですが、ゴール駅での輪行に手こずり、その間に東京まで帰れる終電を逃すという失敗をしてしまいました。それを受け、主だった各方面の終電時間を集中的に調べて覚えてみたことがありました。例えば、中央本線の茅野駅だと、20時半過ぎの特急が最終、という具合に覚える。そうすると、その手前の駅はもっと後の時間でも大丈夫、という具合に、他駅の推定も出来るようになります。ただしこれは最終列車で帰るのを推奨するわけではなく、最悪、何かトラブルがあってもその時間までに輪行出来れば帰れる、というリミットラインを把握しておく、ということです。

参考記事:【輪行ことはじめ】基礎知識をおさらい

 

逆境でのテンションの上げ方

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長距離では、逆境を避けられないシーンも出て来ます。そんな時に試してみた方法をご紹介してみます。

・笑う
グループでしまなみ海道を走った時、運悪く、新幹線が止まるほどの豪雨に当たってしまったことがありました。ひたすら土砂降りが続き、景色は見えず、もはや笑うしかない状況。そこで、文字通り、皆で笑い合いました。そうしたら、かえってテンションが上がってしまい、しおれることなく無事にゴールまで走り切ることが出来ました。

・歌う
山梨の夜叉神峠から降りる前に、完全日没になってしまった時のこと。街の明かりは、はるか遠く眼下。目の前は、漆黒の闇と、シーンという音が聞こえているかと思うほどの静寂の森。その状況で単独。恐怖心が募り、弾けてしまいかねないプレッシャーが圧し掛かってきました。でも、とにかく前進しないと帰れません。

そこで、歌を歌ってみることにしました。どうせ誰も聞いていません、というより、誰もいません。そうして歌っているうちに、怖楽しい?妙なテンションになり始めました。

ふと、いつの間にか道の前方を同じ方向に向かって走る、犬っぽい動物の群れがいることに気付きました。フロントライトで照らした範囲の僅か先に居り、それが何なのかはっきりとは見えません。おっかな楽しい変な気分になっていた私は、恐れよりも好奇心が湧き、その群れとの距離を縮めました。すると、動物は急に散り散りとなり、見えなくなってしまいました。そのまま歌いながら走って無事に里へ下りましたが、もし、歌ってテンションを上げていなければ、恐怖に打ちのめされていた状況だったと思います。

 

無事に帰る

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そんなの当たり前!なのですが、長距離になって疲労感が増すほどに、どうしても気が抜ける瞬間が生じやすくなりがちです。そのため、絶対に無事に帰るんだ!という気持ちを絶やさないことが大切です。

その中で一つ、私が特に強く意識しているのが「安全を他人任せにしない」ということ。

自転車事故の発生状況について調べてみると、その80%以上が「対自動車」で、それに「対二輪車」「対自転車」「対歩行者」等を合わせると90%以上を占めるそうです。逆に「自転車単独」は僅か数%。つまり、事故のほとんどは、相手ありき、で発生しているのです。

そこには運もあるでしょうが、事故についてあまり注意を払わずに走っていたり、「相手の方が譲ってくれるだろう」「相手が気付いて動いてくれるだろう」といった具合に安全を他人に委ねる姿勢でいると、発生の確率が高まってしまうのではないか、と私は考えています。

例として、私の経験をご紹介します。サイクリングデビュー2年目の、中途半端に走り慣れてきた頃。大学のツーリング合宿で北海道を走っていた際、交差点で右折してきた対向車と衝突してしまいました。お互いの不注意が原因でした。私は吹っ飛び、右足骨折と全身打撲を負って病院へ搬送。相手方の車はファミリーで、夏休みのキャンプにやってきたところでしたが、それどころではなくなってしまいました。

この場合、過失割合は1:9で車の方が悪い、とはなるのですが、せめて自分の油断が無ければ防げたかも知れなかった、という後悔が沸々と湧いてきました。搬送先の病院で、相手方のお子さんは健気に大人しく成り行きを見守っていましたが、今頃ご家族でキャンプを楽しめていたはずなのに・・・と思うと、その姿がかえって気の毒で、やりきれない気持ちになりました。自分もずいぶん痛い目に遭って、家族にも心配かけて、愛車は廃車。

事故はみんなが不幸になる!

そう痛感して以来、まずは自分で気を付けることを、常に絶やさないようにしよう!と強く意識するようになりました。

そうすると、気を付けるべき点も自然と見えるようになっていきます。以来、二十数年、幸いにも事故には遭わずに済んでいます。

皆様には、出来る限り痛い目に遭わないように乗り続けて頂ければ、と切に願います。

※安全走行については別記事がアップされる予定です。

 

あとは実践あるのみ

幕末の偉人、勝海舟が、海軍伝習所時代に教師から教わったという言葉をご紹介します。海舟が、教師の「天気が荒れる見込みだからよせ」という助言を振り切って遠洋航海へ出たところ、忠告通りの嵐に飲まれ、命からがら、何とか帰りました。そのことを教師に報告した際に返ってきたのが

それはよい修行をした、いくら理窟は知って居ても、実地に危ない目にも遭って見なければ船の事はわからない、危ない目といっても十度が十度ながら格別なので、それに遭遇するほど航海の術は分かって来るのだ

海舟は、それを聞いて、理屈と実際というものは別だということをいよいよ明らかに悟った・・・という話です。

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この言葉、危ない目という箇所を「挑戦」に差し替えたら、遠乗りもそのまま当てはまると思いました。ここまであれこれ長々と書いてしまいましたが、最後はここに尽きます。あとは実践あるのみ!そして、そこで湧く「プチ冒険感」を、大いに楽しみましょう!!

 

心に勲章を

挑戦というのは、燃えます。挑戦と言っても、別に、世の中的に見て凄い記録でなくたって良い。数字で比較しなくて良いんです。大事なのは、それぞれが持つベストを尽くして挑み、燃えた!ということ。それが、心の勲章となり、後々までも人生の支えとなってくれます。年に一度でも、数年に一度でも、それこそ一生に一度でも良いので、是非、チャレンジングな遠乗りに挑んでみて欲しいと思います!!

 

遠乗り旅の一例レポート:自走de秋田 (全13話)

 

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written by 長山  靖

 

Y'sRoad池袋本館
03-5992-4070

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