伊カンパ社製「エルゴパワー」の変速不調について、問合せが続きましたので主な原因と対処法をご紹介します。
今回の事例は、レバー本体が原因の場合でしたが、機械式変速の不調はワイヤー、変速機本体、フレームにも起因しま
すので、まずは車体全体の点検を行って下さい。
症状1 変速レバーの空動き
原因/ラチェット部アクスル固定ボルトの緩み、ラチェット部の摩耗
今回の事例は、固定ボルトの緩みによりラチェット部がアクスルから完全に外れており、部品の一部が変形していま
した。また固定ボルトが緩み、ラチェット爪のかかりが浅い場合でも動作不良となります。
本来であれば部品交換となる事例ですが、現在カンパニューロ社ではラチェット部やスプリング等の単品販売が限られ
ているため、その他構成部品の状態を確認し、ユーザー様の使用用途を確認した後、一旦様子見の判断をしました。
今回の様な一部部品の交換の場合でも、現状では本体ユニットの交換※1となりますので、レバー動作が不安定な場合は
ボルトの固定確認※2をおすすめします。
※1(以下参考価格)
必要部品/RECORD右レバー本体のみ 10,808円(税抜)〜
作業工賃/8,000円(税抜)〜
作業時間/50分〜
※2(以下参考価格)
必要部品/0円〜
作業工賃/1,600円〜
作業時間/10分〜
症状2 変速レバーの動作固定・戻り遅れ
原因/ブラケットカバーの劣化
ブラケットカバーの劣化やバーテープの巻き方の不備により解除レバーのラチェット爪部にカバーが干渉し解除レバー
の戻り遅れとなる。また、解除レバー側ラチェットに爪がかかった状態では、巻取レバーは動作が固定される。
症状3 変速レバーの動作不良
原因/ハンドル形状および取付トルク
カーボン素材の台頭による独自形状やライディングスタイルの変化によりブラケットの取付位置が多様化している。
上記の理由より、ブラケットの固定力が不足がちになる為、過度な締付けトルク(メーカー推奨値10Nm)による本体の
歪みが生じ、レバー部の動作不良の原因となる。
また、落車時のカーボンハンドルやブラケット本体の破損回避の観点からも過度な締付けはおすすめ出来ない。
マニュアルには推奨ハンドル形状などの記載があるが実際の取付では経験と感覚に頼る場合も多い。
今回の事例は初期の組立時以外に、日頃の点検に依存している場合が多い。
一般には2カ年または2万キロで全体点検(オーバーホール)※3が必要と言われるが、部品の等級や使用状況によっても
大きく異なる。
例えば、雨天走行をしない方や日常点検が行き届いている方であれば3カ年または3万キロ程度は問題が起こりにくい
が、レース活動が中心の場合は、整備を行っていても1カ年または1万キロが目安となる。
日常点検※4の場合は、6カ月または3千キロ程度となるが、消耗品の交換以外であれば経済的な観点からも不具合が
発生してからの対応でも良い。さらにロングライドなどではメカトラブルもまた楽しさの醍醐味である。
対して、レースやイベントが中心の方は日常点検、定期点検は欠かさずに行い「壊れる前に交換」を心がけメカトラ
ブルによるリタイヤなどは回避して頂きたい。
※3(以下参考価格)
必要部品/20,000円〜
作業工賃/オーバーホールB 27,800円〜
作業時間/2週間〜
※4(以下参考価格)
必要部品/0円〜
作業工賃/クイック調整 1,945円〜
作業時間/20分〜