ワイズロードオンラインの石澤です。
知名度こそ地味であれ、数あるエアロロードの中でも高い評価を受けているモデルがあります。それがこの
FELT AR ADVANCED
こちらのAR ADVANED、現在数量限定にて、11速ULTEGRA仕様が驚異のお買い得モデルとなっております!
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とはいえ、あまり名前を知らないモデル、試乗できるタイミングも限られている中で買っても大丈夫??とお考えの方も多いのではないでしょうか。
結論から言います!すぐ買って大丈夫!
といっても不安な方、弊社の「バイオレーサーの中の人」こと、本部の永平が徹底インプレ!
無骨なスタイルに隠れた様々な魅力を解き明かしていきますので、ぜひご覧ください!
※このブログは2020年3月に公開された記事を再構成したものです。
FELT AR ADVANCED ULTEGRA 永平インプレッション!
遅くもないけど速くもない、アラフィフのおっさんが、最低100kmをノルマにハアハアしながら最新ディスクロードをガチ(おっさん的当社比)でインプレします。
他社に先駆けてエアロロードを開発してきた「エアロの大家」、FELTが満を持してリリースした最新スペックのエアロロード。
前作のARですら競合よりも未だに優れた空力を持つというのに、それを上回るというのがこのNEW ARです!
【バイクのキーポイント】
実走感をお伝えする前にこのバイクのキーポイントをご紹介。
>>>「速いのは当然」を標榜
>>>前モデル比9.6%の空気抵抗削減
>>>レースバイクとしての総合性能も向上
>>>シート周りで2倍以上の柔軟性向上
>>>高性能カーボン“TeXtreme”使用
「速いのは当然」とは大きく出たな、と思わず根拠のない上から目線の感想(何様だよ!)を抱くと共に、そう出たからには相当な自信作なんだろうな、と大きな期待も抱きました。
さて、その走りは期待通りなのか否か、この企画史上最長距離を乗り込んで体感してきました!
いつも通り、結論から。
速い!電動アシストか?!
体感速度 < メーター速度…+数キロの感覚!
剛性とそのバランスが絶妙!
動的性能がエアロの犠牲になってない!
替えるところ皆無の高コスパ!
では、どんなポイントがそう感じさせたのか、いつも通りちくちく綴って行きましょう!
インプレコース概要
・職場~自宅往復 54km
・自宅から奥武蔵、秩父、名栗へインプレライド174km
エアロロードの真価を確かめるべく、意図的に長距離・丘陵地帯のアップダウン・15分のヒルクライムを盛り込んだコースとしました。
計228kmです。
ついに200kmの大台を超えてしまった(^^;)
【事務所でポジション出し】
本職のバイクフィッティングシステム「バイオレーサー」でマイポジションを落とし込み。
私の身体スペック(174cm胴長短足)で、サイズ51・ステム140mm 84度でポジションが出せました…と行きたいところだったのですが、専用ステム以外に換装するにはケーブルの切断が必要となるためデフォルトの90mmで我慢。
その代わり、サドル・ハンドル落差がいつもより30mmほど多いので、水平距離の不足を垂直距離でそこそこ相殺できました。
ちなみに専用ステムのラインナップは90mm~140mm!
まで用意されています。
他社のエアロロードの専用ステムは、最長で120mm程度が多いことを考えると、フィッティングをする上でとても良心的。
特に大柄な方や、前乗りする方、胴長の方には140mmのステムがあるのはかなりの朗報。
(正に自分。身長は並だけど前乗り+胴長で140mmステムがデフォなのです)
この専用ステムはケーブルを切断せずとも交換が可能。ユーザーフレンドリーですね。
(ステムの上にスペーサーを積めないので、高さ調整にはコラムカットが必要)
↑シートポストがこの穴から見えなきゃダメよ、っていうのぞき穴。
自分が普段使っている前乗りに適したショーノーズトサドル、 PROLOGOのDIMENSIONが付いていたので、サドル周りのセッティングはマイバイクの寸法を落とし込むだけでサクッと完了。
では、ポジションが出せたので、いざ実走!
【本当に速い!】
はえー!
パッと乗ってちょっと漕いだだけですぐに体感できるレベルの速さ。
各社ハイエンドモデルのエアロロードはどれもパッと乗りで速さが体感できるレベルではあるものの…。
このAR、競合と比較しても互角かそれ以上の速さを感じさせてくれました!
体感(体で感じているフィジカルの努力感)よりもメーターが表示している速度が速い!
このぐらいで踏んでるから、このくらいの速度だよね、ってメーター見るとプラス数km/hくらい速度が出てる…。
いわゆる
AR、恐ろしい子!
ってやつです。
インプレだから張り切ってる、っていう「インプレプラセボ」じゃあなく、主観ではありますがマイバイクや、他のバイクよりも間違いなく速いと感じました。
巡航速度到達までの時間が凄く短いし、巡航維持がとても楽。
流しの25km/hを超えたあたりから急に“加速感”が増して、ぎゅ~んっと2字曲線的に速度が立ち上がって行く感覚。
なんか、電動アシストですか?って思いました(^^;)
あっという間に35km/h巡行に到達し、そのままペースが落ちない速度維持性能。
エンデュランス~テンポペース※で踏んで、35~40km/hでの巡行が容易に維持できるレベルです。※自分のPWRは4w/kg
その結果、この企画の最高平均速度を記録してしまいました。
アラフィフのおっさんがソロで174km、獲得標高1600mのライドでアベ28.7km/h。
上出来すぎ。というか絶対バイクのお陰♪
いつも100km、獲得標高1000mでアベ27km/h台が自分のデフォなのに、それより74kmも多く走って、600mも多く登ってこの結果。
1km/h+αの速度アップ。
同一コース、同一エフォートじゃないので単純比較は出来ないけれど間違いなく速い!
「たったプラス1km/h?」って思った方、間違ってます。
プラス1km/hを一瞬上乗せするのは簡単だけれど、この距離を通してこの速度域で身体的努力だけで+1km/h上乗せし続けるのはほぼ不可能。それが出来るなら普段よほどサボっているか、既に+1km/h速いはずですw
軽量化で数グラム軽くするのに数万円とか掛けるのと一緒で、エアロの向上もコンマ何キロ速くするために涙ぐましい細かな努力をする世界にあって、プラス1km/h以上変わるのはとても大きな差です。
この速さ、同一条件での比較では無いですが、感覚的には以前試乗したマドン、S5、795 BLADE RS、という当代最速クラスのエアロロードと同等かそれ以上なんじゃないか?と。
「速いのは当然」
はい、全くその通りでした…。疑ってしまってごめんなさいm(_ _)m
この日は暴風ではないものの、冬らしくそれなりに風を受けてのライドだったにも関わらず、トランケーテッド・エアフォイル・シェイプ(いわゆるカムテール)のお陰か、風でハンドリングが乱されることが無かったのを付け加えておきます。
【速さ以外はどうなのか?】
速いのは分かった。
ただし、いくら速くてもロードバイク、レーシングバイクとしての「動的性能」が劣っていたら直線番長、イーブンペース番長で終わってしまいます。
このAR、速いだけでなくて動的性能も一級品でした。
これだけのエアロ形状にも関わらず、オールラウンドモデルと遜色のないバイクさばきが違和感なくできます。
バイクを振りやすいし、ダンシングも気持ちよく力を乗せられます。
下りのコントロール性能も高く、STRAVAの定峰峠・秩父側の下りセグメントで、それほど気張らず走って8位にランクイン♪
ここの下り、マイバイクだといつも突っ込み過ぎてアンダー出してラインを外す所があるのですが、スルーアクスルとフレーム剛性が相まったバイクのスタビリティのお陰で、全て危なげなくオンザレールでこなせました。
バイクを倒し込んでも一切不安なし。左右コーナーの切り返しもスムーズに決まります。
下りの速さには恐らく、空力の良さも効いているのでしょう。
空気抵抗は速度の二乗に比例するので、下りの50~70km/h域ともなると空力は無視できませんからね。
スプリントも空力と剛性のベストマッチで、170kmのライド終盤でもMAXスピードまでグイグイグイ!っと伸びてくれました(乗り手の脚力なりに…)。
自分ごときの15秒600wのスプリント程度では、BBもヘッドもフロントエンドもたわむ気配がありません。
「速いのは当然」=速さ以外も妥協してないよ
ってことですね(^^)
今期、UCIプロチーム「ラリーサイクリング」のメンバーの多くが、マーケティング的な仕込み無しでオールラウンドモデルのFRではなくARを選んだとのこと。
当初FRを選んだライダーも、チーム内の口コミでどんどんARに乗り換えたというエピソードにも納得です!
【ペダリングフィール】
ハイエンドクラスのカッチカチの高剛性ではないけれど、良い塩梅に高めの剛性。
ミドルグレードにありがちな生ぬるさはナシ!
ロングライド終盤でも脚がフレームに踏み負けない適度な硬さ。
味付けが上手い!
バイク全体としては、フロントが硬め、リアが気持ち優しいかな?
(リアが優しく感じるのは後述のリーフスプリングシートポストのお陰もあるかも)
フロントが硬いから力が逃げずにキビキビとスピードが乗ります。
トルクを掛けても良いし、ケイデンスを上げても良い。
模範的に3時~4時で踏みやめても良いし、もう少し踏み切っても良い。
イージーにペダリングしても、許容範囲の広さで受け止めてくれます。
この「良い塩梅の高剛性」を支えているのは、UHM(Ultra Hybrid Carbon)と呼ばれる高弾性と中弾性のカーボンを適材適所に丁寧に配置したレイアップスケジュール(積層設計)と、自転車業界ではFELTと数社だけが使用するTeXtremeカーボンのお陰なのかもしれません。
ここら辺の小話はこのブログの最後の方に書いておきますね。
【登坂】
58mmというかなりディープな、特別重くも無いけれど決して軽量ではない1730gのホイールを履いているにも関わらず、登坂中にそれをネガとして感じることはありませんでした。
同等重量のホイールを履いたバイクでは登坂でそれなりにネガを感じましたが…。ホイール性能か、フレーム性能か。多分両方だろうw
むしろ緩斜面では空力の良さで乗せた速度が落ちにくい印象さえありました。
ペダリングフィールの項でも触れましたが、ペダリングスタイルに対する許容範囲が広いので、シッティングでもダンシングでも乗り手のイメージ通りに進ませることができます。
良い塩梅の高めの剛性は登坂でも好印象で、硬さに踏み負けないけれど、物足りなさも感じない、快適なヒルクライムが味わえます。
車重はペダルレスの実測重量で8.35kgと、「アルテ仕様のエアロディスクロード」の標準値内に収まってます。
カリカリのヒルクライムバイクとは戦うステージとキャラが違うので、この重量が重すぎるということはありません。
それに、条件にも依りますが、斜度6%までならエアロロードの方が速い、という他社の技術資料もありますから、これからの時代、あまり重量に神経質になる必要は無いのかもしれません。
【快適性】
先にも書いた通り、硬めのフロントと優しめのリア、という構成なので、リアからの嫌な突き上げ感はありません。
リーフスプリングシートポストとダンピング・シートポストスリーブの効果なのか。
フレーム本体のシートステイの剛性コントロールによるものか。
アッセンブルされていたコンチネンタルGP5000TLのチューブレス効果なのか。
※完成車にはクリンチャー仕様のGP5000CLが装着されます。
たぶん全部効いているかと。
(また出たこのフレーズ)
ただし、エンデュランスバイクのような突出した快適性ではなく、いかにも縦に硬そうな見た目の割には及第点、というレベルです。
あ、でも170km走っても不満が無い訳で、及第点は超えてるのかな?(^^;)
先代のARは逆に見た目通りに縦に硬いバイクだったそうで、快適性の向上は今回かなり重要な開発テーマだった、という話ですよ。
【コスパとパッケージ】
機械式アルテ+油圧ディスク、レイノルズのAR58にコンチネンタルのGP5000CL、サドルはショートノーズのディメンション、カーボンエアロハンドル…。この仕様から変える所が無いw
これで59万8千円。絶対値としては高いけれど、内容考えたら凄いお買い得。これ買って後悔すること無いだろうなぁ~。
このARの速さなり、動的性能の高さって、フレームの素性の良さはもちろんのこと、FELTの良心的なこのパッケージングに依るところも大きいんじゃないだろうか?
特にホイールとタイヤが果たしているウェイトは大きいと見ています。
フレーム性能をフルに活かすために、メーカーが考えるベストな仕様でベストな性能を味わってほしい、という気持ちをこのパッケージングに感じました。
コストダウンやプライスタグありきでホイールが犠牲になったバイクが多い中で、ある意味異色の存在。
あとからホイール買い替えることを考えたら、総投資額は抑えられるはず。この値付けで利益出るんでしょうか?
【まとめ】
>>>速いのは当然!
>>>動的性能も文句なし!
>>>「良い塩梅」に高剛性!
>>>見た目によらず快適な乗り心地!
>>>コスパ抜群!
ディスクエアロロードのトレンド全部盛り、かつ性能に妥協無しの高性能レーサー。
もし自分が「自転車始めて3年目です、レース参加とロング練にすげーハマっちゃいました、2台目考えてます!」
ってシチュエーションだったら有力な購入候補になりそうです。(いいよね~今の人は…)
今回も良いバイクでした♪
【FELTの「ものづくり」へのこだわり】
>「良い塩梅の高剛性」を支えているのは、UHM(Ultra Hybrid Carbon)と呼ばれる高弾性と中弾性のカーボンを適材適所に丁寧に配置したレイアップスケジュールと、自転車業界ではFELTと数社しか使用しないTeXtremeカーボンのお陰なのかもしれません。
と先に書きましたが、それにまつわる小話。
スウェーデンのOxeon社が開発したTeXtremeは薄くて軽量、かつ高剛性であるものの、通常のカーボン素材よりもコストアップしてしまうため、他のメーカーはあまり使いたがらないのですが、FELTは性能を優先してこれを採用しています。
↑19年のFELT資料より。20年以降はFACTORもフレームに使用。
↑大きな目で編まれたのがTeXtremeカーボン。
自転車フレームに使っているのは自分の浅薄な知識で知っている限りでは、FELTとFACTORくらい?部品・用品に使っているのはPROとGIROとか。自転車以外だとPRINCEのラケットでも使っていますね。
カーボンの積層方法(レイアップスケジュール)自体も、他メーカーが通常100工程・10ページの指示書なのに対して、FELTは600工程・60ページと、何と6倍。
重ねるカーボン層の厚みも他メーカーがFAW200g(FAW=Fiber Areal Weight※)に対して、FELTはFAW75g。
※織物の繊維目付。単位面積あたりの繊維の重量(単位:g/㎡)⇒https://www.carbonfiber.gr.jp/tech/glossary.htmlより
同じ厚みで成形するにも、部位ごとに要求される性能に合わせて薄いカーボンを積層することで、きめ細かなチューニングを施しているそう。
フレームの中身は外見からは見えませんが、細かなところにこだわってカーボンフレームを設計していることが分かります。
FELTは、BIG BRANDと違いプロチームサポートなどの巨額な広告宣伝投資は出来ないと、自ら語っています。
その代わり、自分たちの強みである素材・製法に対して優先投資をしているそう。
言葉は悪い?かもしれませんが、強みを活かした弱者(すみません)の差別化戦略ですね。
FELTって派手さはないけれど、こだわりの職人集団なのは間違いありません。