こんにちは、お茶の水店の木村です。
今回は、タイトルのとおり「楕円チェーンリング」について、ぶっちゃけトークをしていこうと思います。
長くなるので、結論を先に述べておくと「楕円チェーンリングはペダリングの矯正器」です。
解説!楕円チェーンリング!
楕円チェーンリングとは
クリス・フルーム選手らが使用したことから、少し前に流行ったカスタムでご存じない方も多いかもしれないので、まずは楕円チェーンリングとはなんぞや、というところから説明していこうと思います。「知ってるわ!」という方はここは飛ばしてもらって大丈夫です。
私も使用しており、楕円チェーンリングの代表的なメーカーであるROTORのHPを参考にしながら説明していこうと思います。
↑ワタクシが使用しているROTOR IN POWER×Q-RINGの組み合わせ。最高です。
「一番力がかかる部分で重くなり、力を掛けにくい部分では軽くなってペダリングの効率を向上させる」ことを目指して作られた楕円チェーンリングは、自動変速ギアが元になって生み出されました。上の画像に映っている製品群は、ROTORが25年間の歳月をかけてQ-Ringの開発に至るまでに製造してきたものです。これらの製品の開発を経て、ペダリング効率を向上させるためにROTORが出した回答が楕円チェーンリングです。
スムーズなペダリングを促す
上の図はペダルにかかるトルクとクランクの動く速さの関係を表わしたものです。
クランクの動く速さ(角速度・Angular velocity)は、90°あたり(時計で言う3時)でピークに到達します。
トルク(Torque)は105°あたりでピークに到達します。これに伴いパワーもこの角度でピークを迎えます。
自転車の走行はパワーを増やす一方で効率を上げることも重要です。疲労する事なくパワーを維持出来る方が速いからです。
筋肉がパワーを最大限発揮するには最適な長さがあります。
例えばスクワットをするとき最下点では、筋力を発揮する事はできません。
またバーベルを上げ切った状態でも筋力は発揮できなくなります。ちょうどその中間ぐらいでスピードとパワーは最大になります。
ペダリングにも同じことが言えます。ペダルが最も上にある状態、下にある状態では筋力は上手く発揮できません。
これらをデッドスポットと言います。
デッドスポットに来た時に力を込めるのは効率が悪いために力を抜いてやり過ごすのがペダリングの基本です。
オーバル・チェーンリングではここの半径を小さくすることで、力が抜けやすくしてあります。
こうすることで筋肉を自然のモーションに近い形で動くようにすることが出来る為に”エコ運転”出来ると言うのがQ-RINGSの設計思想です。
画像からわかるように、ROTORのクランクは楕円形になっておりクランクが12時にあるとき、チェーンリングの直径が小さくなり、最も力を加えやすい3,4時のあたりに直径が大きくなります。
これによって何が生み出されるかというと、最も踏むべきポイント、つまり最も力を加えやすいポイントでギアが勝手に重くなることでよりパワーを伝えられるようになるのです。逆に、力を加えにくい、つまり脱力すべきポイントではギアが軽くなり、スムーズに引き足に移行するのを促してくれます。
自転車に限らずスポーツにおいて美しく、そして効率の良い動作とは、力を入れるところには力を入れ脱力するところはしっかりと力を抜く、という動作だと言われることが多いと思います。
ROTORのQ-RINGはこの最も効率のいいペダリングを、意識せずとも行えるようサポートしてくれるパーツです。
「ほんとかぁ~?」と思われた疑り深いそこのあなた!ちゃんと実験結果でROTORの優秀さは示されているんデス。
カリフォルニア・ポリテクニック州立大学のクリスティ・オハラらが行った実験では、最大パワーに変化は見られませんでしたが、平均パワー(+25W )、平均スピード(+0.7kph)はオーバル・チェーンリングで明らかな向上が見られました。
同じくクリスティ・オハラらが行った酸素摂取量を比較した実験では、オーバル・チェーリングを使った場合、明らかに酸素摂取量が減りました。 また同じ負荷で心拍数を計測したところオーバル・チェーンリングは心拍数が減った事からペダリング時の効率が上がっているのが分かります。
実際に使ってみて
納車してからおよそ2年弱。色々なところを走りました。当店で行っているサンデーライドやフジヒル、要するに平坦から山岳まで網羅してみての感想を書いていこうと思います。
変速性能
↑サンデーライドで早々にちぎれたときに撮った写真。さみしかった。
正直なことを書くと、やはり純正のチェーンリングに比べるとフロント変速性能はすこし落ちてしまいます。社外品を使う以上ここは致し方ないでしょう。しかし、私が使用しているR8100系のアルテグラでは不満を感じないレベルで変速できています。組付けの段階でしっかりと調整をしておけば、変速トラブルは起こらなさそうです。
チェーン落ちに関しては、登り終わっての下りでインナーに入れたままだったり、クランクを逆回転させる、などのプレイをしなければ大丈夫だと思います。過去に私がチェーンを落としてしまったときは、疲れや油断などで前述のような雑な扱いをしてしまった時でした。ただ、このようなことをしてしまうと純正でも落ちる可能性が非常に高いので、ROTORだからチェーンが非常に落ちやすいというわけではないです。あくまで純正よりも少し気を遣ってあげる必要があるという程度の話です。私は念の為K-EDGEのチェーンキャッチャーを付けてはいますが、もし不安で有ればつける、くらいの感じで良さそうです。
純正よりはセッティングがシビアになるので、取付の際には我々プロショップにお任せいただいただくことをオススメ致します。
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平坦
↑無人駅である上総川間駅にあるスーツケースの壁と。スーツケースがコンクリに埋まっている様子を見られるのは日本でここだけでしょう。
それ以外に関してはまっったく文句のつけようがないです。このバイクに乗り換えるまでは50-34Tのコンパクトクランクが付いており、52-36Tのセミコンパクトは少し調子に乗ったかなと組みあがるまで不安だったのですが、杞憂に終わりました。一番力のかけやすいところだけ重くなり、それ以外では軽くなるのでより自然なペダリングができるように感じます。チェーンリングの形状が真円から楕円へと変わった事で違和感等も特にありませんでした。
本当に自然に、レベルの高いペダリングをさせてくれているような感じがします。平坦の巡行においては、最高速が上がった!というよりも、パワーが節約できより長い時間、良いペースで巡行できるようになったと感じています。千葉は平坦だらけなので、この点は非常にありがたいです(´;ω;`)
登り
↑お茶の水スタッフで不動峠を登った際の一枚。登りはじめた瞬間に置いて行かれました。さみしかった。
登りに関して。元々登りが苦手、という事もあってこの部分の評価は難しいところですが確実に楽になっているとは思います。特に斜度がきついときなどのパワーをかけないとどうにも進まない場面で助けてくれるような印象がありました。こういうきついシチュエーションにおいては、きれいなペダリングではなく下に踏み抜くような力のかけ方をしてしまいがちです。パワーがバイクへと伝わりずらい下死点で踏んでも余計に疲れてしまうだけですが、チェーンリング側で力のかけ方をコントロールしてくれるので疲れにくくなり、恩恵を受けられる場面だと感じました。
総括
使うまではメーカーの言い分に対して半信半疑でしたが(笑)、今では自信をもってお客様におすすめできます。きれいなペダリングをさせてくれるのでパワーが節約できるという点、これが非常に大きいメリットです。そのため、ロングライド派の方からレーサーの方まで、どんな方にもお勧めできるカスタムです。
当店には、楕円チェーンリングを使用しているスタッフが複数在籍している他、多くのお客さまから取付のご用命を頂いており取付実績も豊富です。来シーズンに向けてのカスタムとして是非いかがでしょうか。ご相談お持ちしております。