こんにちは。池袋本館の長山です。
これまで発信して参りました2014年9月のロングライド
「自走de秋田」
の続編その3をお届けします。
本レポートで、健脚自転車・ロードバイクの醍醐味の
一端を少しでもお伝え出来ればと思います。
また、旅に出にくい昨今、このレポートで僅かばかりでも
旅気分を味わっていただけたら幸いです。
ライド1日目(通算4日目)
2014年10月27日(月) その3
漆黒の闇に包まれた雨降る峠道が続きます。
周囲に明かりは全く無くなり、緊張感が高まります。
ごくたまに車が通り、その瞬間だけ心強くなるのですが、
すぐに雨音だけの闇に戻ります。
去りゆく車よ、待ってくれー!という気持ちが湧いてきます。
獣除け&気を紛らわすために
ベルを鳴らしながら走っていましたが、
雨音でかき消されてかなり微妙。
そこで、久々に歌を歌いながら走りました。
(この時の)10年ほど前、山梨県・闇の夜叉神峠から
単独で下るハメになった時に編み出した知恵です。
ばかみたいに声出して歌っていると、
怖楽しい?変なテンションになるのです。
ただ、今回は降雨があるためテンションは上がりにくい。
しかも先を急ぎめの登坂なため、息が弾んで歌い辛い。
とにかく、淡々と漕ぎ続けるしかない。
なかなか車が通らず心細いと思っていたら、いきなり
対向車が4、5台まとまって通り過ぎ、また静かになりました。
17:34
ふと、時代小説で読んだ、山賊対策で集団になって山越え、
という場面を思い出しました。
只今、自転車で絶賛一人漕ぎ中!
まさか、現代に山賊なんて出ないよなぁ、
と思いながら漕ぎました。
10年前(2004年)にここを通った時、
頂点にはスノーシェッドがあったと記憶していました。
記憶の通りスノーシェッドが現れ、ピークへ登頂!
少しホッとして、峠の下りへ。
が、下りがまた、寒い!!
ゾゾゾ~ッと来ます。
フツーに歌を歌っていたのが、
徐々に〇渕剛調の渋い?歌い方になり、
だんだん歌うのもしんどくなり、
遂には奇声を発してごまかすようになり。
「しゃびぃー・・・」(寒い)
「アブ!」(筋肉)
・・・等々、呟きながら走ります。
普通に考えたら明らかにキチガイですが、
追い込まれると、なりふりかまっていられなくなるものです。
どーせ誰も見ていないし。
雨の日は、獣はあまり動かない。
という、もっともなような、根拠の無いような説を
勝手に自分に言い聞かせながら前進。
この阿仁(あに)エリアは、熊、マタギの本場です・・・。
17:42
18:00 雨の勢いは衰えを見せず、
表示気温は6℃まで下がってきました。
寒い。
としか言いようがありません。
来し方を振り返ると、闇。
雨の中、こんなところを走って来たのか・・・。
阿仁熊牧場のノボリ。 18:05
(牧場のTOPページだけ見ると、熊かわいい!?)
近くには温泉宿の打当温泉マタギの湯があります。
以前、雪ライドで来た際、お世話になりました。
(2009年1月14日)
立派で快適な旅館だと、効率の悪い独り者は断られがち。
でも、すんなり受け入れて泊めてくれて、大変有難いことでした。
また泊まりに来たい。
・・・てか、今、泊まりたい!
だってもう18時過ぎですよ、旦那。
この雨と寒さと闇の中で!
・・・という自らの心の声をぐっと抑え、前進。
愛車は、そんなことにはお構いなく、
水も滴る何とやらで黙々と走ってくれます。
18:14 道の駅あにで自販機休憩。
とにかく寒くて寒くて、ホットドリンクを三本飲みました。
それでも寒い。
自動音声の自販機から、元気いっぱいな声で
「いらっしゃいませ!冷たいお飲み物はいかがですか!?」
と言われました。
その冗談、寒いよ・・・。
ここには、マタギの里らしい木彫りが並びます。
チェーンソーでいろいろ造ってしまうというから凄い!
・・・と感心しつつ、休んでいても
体の温もりが復活するわけでは無し。
気を引き締め、再び走り出します。
寒い寒い下り基調、たまの登り返しがあると嬉しくなります。
負荷が掛かって、少しでも身体が温まるからです。
普段は嫌いがちなトンネルも、中は少し暖かく、雨宿りにもなります。
トンネルでこんなにホッとするのは珍しい?
19:14
そんな悪戦苦闘を経て、思い入れのある町、阿仁合に到達。
19:30
私の曾祖母と祖父のふるさとです。
かつて銅山で大きく栄えた町も、今は素朴な夜景の中にひっそりと。
トータル4日目の走行で、ここまで轍を刻みました。
自宅から約663km。
じわじわ、感動が湧き上がります。
しかも雨の降りしきる夜7時半、というストイックな状況。
素晴らしい思い出となること間違い無し。
この周辺に何箇所か知人がいますが、こんな時に
「峠越えて自転車で来ました!」
なんていきなり訪ねても、オバケの出現みたいで
胆をつぶしそうと思い、ゆっくりの再訪を誓ってパス。
時間的にも厳しいですし。
街の玄関口、阿仁合駅だけちょこっと寄り道。 19:42
せっかく来たのに、誰にも会わず
ただ通過する寂しさをかみ締めながら
ふと気配を感じて空を見上げると、
えーーっ!?
なんで星空が!?
さっきまでザンザン降りだったのに!?
山の方角では、一瞬雷が光りました。
今いる所だけの晴れ間です。
少ししたら、星空はすーっと雲に隠れていきました。
かつてのふるさとの町での、天の粋な計らいでした。
阿仁合を出るときには再び冷たい雨が降り出し、もの凄い寒気。
19:58
やばい、いよいよ寒さが鋭くなってきた。
ここから北秋田市の中心、鷹巣に至るまでは山間の道のり。
ここは早く抜けないと、寒い!
ひたすら歌と奇声を交え、テンションを鼓舞しながら突っ走ります。
この奇行、かなり前向きに言い訳すれば
武道の掛け声みたいなモノでしょうか。
20:17 阿仁前田で、久しぶりのコンビニ。
なんて神々しい明かりなんだ!!
角館エリアを過ぎてから、ずっとコンビニはありませんでした。
ホットドリンクを2本と、
にくまんを2つ。
温もりが沁みるぜ!
米内沢(よないざわ)で直角に国道を曲がるところがあるも、
闇で看板を見落とし、違う方向へ数百メートル前進。
危なかった。
でも、やたら明かりのついていない里の暗さが、妙に心に響きました。
明るい方が便利なのでしょうが、この暗さは素朴で、
自然に近しい感じがしました。
そんな中にもポツポツと僅かに灯る明かりに
生活感を感じ、グッときます。
うおっ、また星空!!
20:45
口をぽっかり開けて見上げていたら、すぐまた雲隠れしていきました。
ずっと星空が見えているのも良いでしょうが、
ザンザン降りの合間に突然現れるという
レアな展開はシビれます。
晴れている合間に何とか写真を撮りましたが、
正直、寒くて堪りませんでした。
ここまで寒くなかったら、もっといろいろ撮り試ししてみたかったなあ。
ローカルコンビニ登場、めちゃくちゃ気になる! 21:42
でも、時間(と心)の余裕なくて外の自販機でガマン。
このルート、またゆっくり来たいです。
こんなに星が見えるなら、夜も良いな!
雨はしばらくカンベンです!
寒い、寒い、寒い!
雨粒の落ちる速度が、しばしばフワフワと遅くなります。
雨と雪の境界線です。
この辺り、白神山地が至近。
吹き付ける冷風、雪女の息吹か!と思いました。
そんな時に明るい建物を見ると、
それだけで少し温かい気持ちになります。
22:18
100%、気のせいなんですが!
米代(よねしろ)川に架かる橋。 22:21
写真では判りづらいですが、道は背後に向かって登りです。
10年前(2004年)、ここを地元の学生がシティサイクルで
ぐいぐい登っていたのに感心したのを覚えています。
懐かしいなあ・・・。
22時半で既に消灯していた鷹ノ巣駅で、
やっと大館までたどり着けるという確信が芽生え、
ビジネスホテルに電話。これで今晩の宿はOK!
あとは大館まで20km弱を、走るだけ!
国道7号に入り、進路は東へ。
日本海からの風か?
強い西風が吹いていて、追い風。
これは頼もしい!
道中、道路にちょくちょく気温計がありましたが、
気温と体感温度は全く別物だと、身に染みてよく分かりました。
数字が高くても寒い時や、数字が低くても少しマシな時など、
いろいろありました。
また星空が出た。
雨や曇りベースなのに、時折星空が出るという不思議。
それだけ荒れた天気だったのでしょう。
こんな劇的な天気、晴れよりも当たるの難しいんじゃないか!?
実は、物凄くツイていたのかも知れません。
時刻は23時半を回り、日付変更は近い。
13時半過ぎに角館を出て以降、食べたまともな食料は、
これまでに書いた
ぼだっこおにぎり、学生調理、にくまんx2個。
あとは合間にスナックを少々とホットドリンクのみ。
・・・ハラ減った!!!
でもゴールは近い、我慢、我慢。
そして、日付を越え・・・
2014年10月28日(火) 0:03
遂に、当初の目標地点、大館に到達!!
やった・・・!
二回に分けた分、正直ワクワク感は少し落ちましたが、
それを補って余りある、厳しくも劇的な道のりでした。
険しい方が、ゴールした時の感動も大きいものです。
自宅から、サイクルコンピュータ値で約718km。
大館は、私の曽祖父の代より以前のふるさと。
このシーンには、「NHKこころ旅」の、
火野正平さんが到着時によく呟く、優しい語り口の
「来たよ」
というセリフが、とてもしっくり来ました。
先ほど予約したビジネスホテルへ。 0:08
支払いのためにデイバッグから財布を取り出そうとしたら、
バッグ内から冷気がふわりと立ち上がりました。
以前、寒空の箱根山中から下った後の温泉受付で
山から下りてきたことを話したら
「お客様から冷気が漂ってきますよ」
と言われ、まさか冗談!と思っていたら、バッグを開けて納得、
本当に冷気が漂っていた、という思い出が蘇りました。
ホテルの温泉は0時までで終了でしたが、
寒そうな姿を見かねてか
特別に開けてくれると提案して下さいました。
が、悪いし、とにかく腹ペコなので
先ずは食いたい!!
ということで遠慮しました。
嗚呼、湯船、入りたかった。
でも、その人情は、温かかったです。
(当時は)近所でもお馴染みのコンビニ
サンクスで、弁当を2つ獲得。
温度差によるカメラのレンズ結露か?
画像がほんわか曇っていますが・・・、
ただのコンビニ弁当が
物凄いごちそうに見えました。
0:31 いただきます!!
ガツガツばくばく。
うまい、うますぎる!
後日、東京で同じハンバーグ弁当を見かけた際
この時の感動が蘇り、また買って食べてしまった、
それほどの感動でした。
デザートにはスギッチまん。
スギッチは、秋田県のマスコットキャラクター(※当時)です。
目標コース走破をかみ締めながら、秋田地酒で祝杯。
・・・なんですが、緊張からの解放で呆然として、
なかなか飲み進みませんでした。
相当、疲れたようです。
でも、ここまで無事に来れて良かった!
おやすみなさい。
走行距離:146km
獲得標高:1122m
走行時間:6時間57分
当初定めた川崎~大館コース、四日間の総計
走行距離:718km
獲得標高:4490m
走行時間:32時間38分
平均速度:22km
その4へつづく
CATEYE INOUで取った記録
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